アイデンティティの揺さぶり合い
入社して一年が経ち、新入社員が入社してきた。
私は後輩というのがめっぽう苦手で、それがなぜかというと優秀な人間に自分のアイデンティティが脅かされるのが怖いからである。
実際、今回入社した新人も様々な点において私よりも優秀であった。
自分自身で他人より優れていると思っていた部分が年下に抜かされるというのは大変苦痛で、自分という存在が何のためにあるのか、虚しくなってくる。
しかし、それによって、必死になって自分が優れている部分が何なのか探し、その部分を伸ばそうと努力し始める。
レーダーチャートで例えれば、グラフどうしを重ねて、より先鋭な部分を探して、それをさらに高めようとすることである。
人間というものはそうやって他人にアイデンティティを脅かされ、揺さぶられることで成長するものなのだろうと思った。
今まで、私はそのような脅威と出会うたびに、引き籠り、安楽だけを求め、そういう対人関係を避けてきた。
その結果、自分の優れている部分が何なのか分からず、ただただプライドだけが先鋭化してしまったのだろう。
年の近い兄弟もなく、同年代のクラスメイトと交流をまともに持たずに生きていくことは、大変にもったいない人生の過ごし方をしているのかもしれない。