日記
煩わしいものは置いてきて自転車を走らせる。
川沿いの道をずっと走り続けると、そのうちに草地の生い茂る道となった。
自転車を降り、柔らかな草の上に寝ころんで空を仰いだ。
黄昏の空を背景に、送電塔のくっきりとした影。その隣には夜を待つ三日月。
撮りたいと思う風景に出会うときに限り、スマートフォンを持ってきていないものだ。
あの月にうつる影、この地球自身の影。
沢山の人が喜び、悲しみ、たくさんの感情や営為の凝縮したこの地球、その影が、今見えている。静かな感動を覚えた。
送電塔近くの電線に、二羽の鳥がとまった。
電線にとまっても鳥が平気なのは鳥の抵抗値の方がずっと大きいから、らしい。
一方の鳥はすぐに飛び立ち、離れていった。
すぐにもう一羽の方も飛び立つ。
先に飛んで行った方は相方だったのか、連れ立って大空を羽ばたいていった。